千円札はベルク札になれるのか?

ハイパーインフレーション最新話を読みました。

期せずしてなのか、それとも狙ってやったのかはわからないけれど、一部界隈で取り沙汰されている現代貨幣論、万年筆マネー説、簡単に言えば「国民に通貨を供給すれば消費が加熱して景気が良くなる!(

作中ではマジに良くなった)」という考えに則った展開で、面白さは勿論「偽札をこんなふうに活用するのか〜〜!」って驚かされました。すげえ良かった。

 

で。

俺は(まだまだ勉強不足の者が名乗るのはおこがましいけど)多分積極財政派というやつなので、今回のお話を読みながら無邪気にもこう思っておりました。

 

「やべえな、風吹いてるな。積極財政の啓蒙を漫画媒体でやるとかマジパねぇな。これはマジで日本の経済良くなるルートがワンチャンあるくね?」と。

 

しかし、けれど、ところが。

コメント欄とかTwitterの感想漁ってるとけっこう厳しめの見解が多かったんですよね。

 

金本位制だから出来たこと。日本では通用しない」

とか。

「そもそもバラマキを行えば通貨価値は下落する」

とか。

「これは漫画だからな。現実と一緒にするな」

とか。

 

こういうツッコミをやんわりと否定して、いやいやこういう見方もできるよ。まだ結論を出すには早いよ。積極財政やMMTもそこまでバカにしたもんじゃないよ。みたいに考え方を提示していこうというのが、この文の主旨だと思います。たぶん。

 

 

 

じゃあ早速。

 

金本位制だから実現できたこと。現代日本金本位制じゃないから無理」

 

作中において、ヴィクトニア帝国は金本位制をとっていたがゆえに「政府が自由に通貨を発行することができない」状態にありました。それゆえにルークの偽札供給が消費を回復させ、景気を向上させたわけです。

 


つまり、逆説的に言えば、「おカネの供給で景気が向上する可能性があるのは、通貨発行が本来は必要であるにもかかわらず、政府が通貨を発行できない」状況であるといえます。

 


では日本の現行制度下においてはどうでしょうか。現在、わが国においては与野党問わず「PB黒字化」「財政健全化」が目標として掲げられ、とにかくおカネは使えない、国債発行は国の借金だからしちゃダメだ、財源がないから増税だ、でも法人税は下げるけどね、といった状況です。

 


つまりは金本位制でもないのに、通貨の発行が制限されていると言い換えれられるわけです。

 


「通貨を刷りまくればその分一単位あたりの価値は下落するぞ。ヤバいじゃん」

 

なんか一見「お金の価値が下がるの!?やばいじゃん」みたいなパニックに陥りかけるけど、

そもそもインフレ下でお金の価値が下がるのは当たり前です。

問題の本質を強いて言うならば、そのインフレ下において

 


通貨供給による需要増

    ↓

供給の不足による原材料や労働力の価格上昇

    ↓

購買力の上昇

    ↓

最初らへんに戻る

 


という好循環を起こせるかどうか、ではないでしょうか。

 


ここらへんで「やったぜ俺の勝ち!はい論破!」みたいにまとめたいところなんだけど、今まで語った見解はもちろん、積極財政自体が正しいと言えるかどうかは俺自身完璧には保証できないです。いろいろ振り返ってはいるつもりだけど、まだ間違ってることに気づいてないだけかもしれんし。

 


ただ、今までさんざん「国民の借金」と言われて国民への脅しに使われてきた国債残高が実質的に「通貨の発行量=マネーストックを記録したもの」でしかないこと、

国債の大部分は日本銀行が引き受けているし、これからも引き受けるので、理論的には自国通貨建国債のデフォルトはあり得ないこと。

この辺はいろいろバカなりに調べまくって本読んでなんとか理屈の底から理解できるようにはなりました。

 

 

 

なんかこう、おカネとか数字のことってだけで複雑なのに、政治政策が絡むと余計わかんなくなるし、ヘタなこと言ったら叩かれそうだし、その辺に転がってるインスタントな正しさを採用するのが無難だってのもわかるんだけど、(俺自身有名どころのアカウントをRTするだけしてわかりもしないのになにかした気になって満足することが多いです)、きっと、多分、それをちょっとだけ調べて、ちょっとわかるだけでもすごい意味のあることだと思うんですよ。それを2回か3回やって、もし自分の間違いに気づいたら反省して、ぐらいまでいったらもう神だと思う。

投票とか選挙とか、そういうのに比べてあまりにも地道でめんどくさいけど、もしよかったらよろしくお願いします。